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一期一会
ベル・ペンドリへようこそ
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 [010] かぼちゃと雲丹の冷たいスープ
かぼちゃと雲丹の冷たいスープ フランス料理で、じゃがいもをこして作ったビシソワーズは、夏のメニューのトップであるが、「かぼちゃと雲丹の冷たいスープ」が初夏のメニューとして登場していた。かぼちゃは甘すぎないだろうか、と心配になる。食事の最初に出てくるスープが甘いと、魚や肉料理を食べる気持ちが萎える。さらに、かぼちゃと雲丹は合うのだろうか、不安も残る。

店の主人が「決まりましたか?」と言ったかと思うと、「かぼちゃと雲丹の冷たいスープをぜひ、昨日から出したメニューです」と薦める。その気迫に「ウィ」と答えてしまった。
カクテルグラスに、クリームがかった黄色と透明なコンソメの二層のスープの上にたっぷりと雲丹が盛られている。コンソメはゼリー状だが、固まっているのか、液体なのかわからない。

スプーンがスープに、スーッと入っていった。なめらかだ。雲丹とコンソメとかぼちゃが全部、スプーンに入ったのを確認して、口に運ぶ。クリーミーな舌触り、雲丹の味がする。コンソメの存在感もある。かぼちゃの甘みも調和している。しかも海のにがりが見事に消えている。コンソメの塩分とかぼちゃの甘みもちょうどいい。味だけではない、喉越しがいい。
安心した、満足である。何でも、食べてみなければわからない。(2007.06.05)
 
 
 [009] 花山椒ときんきのしゃぶしゃぶ
花山椒ときんきのしゃぶしゃぶ 備前焼の皿に、馴染みのない野菜が山盛り盛られて、テーブルに運ばれてきた。小さな黄色い花をつけている。その花はとても小さい。一つの房と言っていいのだろうか、3センチから4センチぐらいである。店の主人に聞くと「花山椒です。関東では採れないので、珍しいかもしれません」と言われた。「花山椒は4月と5月しかありませんから、今日が最後ですね。きんきのしゃぶしゃぶで召し上がっていただきます」と付け加える。

最後となれば、さらにありがたみが増す。きんきが運ばれる。赤い皮をつけた肉厚のきんきである。しゃぶしゃぶ用の鍋と卓上コンロが用意された。日本料理の落ち着いた雰囲気を壊さないように、コンロは黒くホウロウで作られた特別注文だ。主人のこだわりが伝わってくる。

薄味でこくのあるだしを鍋に満たし、花山椒がたっぷり入れられ、すぐにきんきがさっとだしの中を通される。湯通しのきんきが入れられた器に茹で上がった花山椒が盛られ、これをポン酢で食べる。細く刻んだあさつきがさらに味わいを添える。
花山椒は、山椒の香りとともに、舌にピリッと辛味を感じられるが、まろやかで、わずかに歯ごたえがある。香りといい、食感といい、きんきの脂の乗りといい見事な調和だ。次に食べられるのが来年の4月とは、待ち遠しい。(2007.05.29)
 
 
 [008] そら豆と芝海老の炒め
そら豆と芝海老の炒め そら豆の旬は4月から6月。桜が咲いた2ヵ月後が、その地方での空豆の旬だと言われる。 南北に長い日本では、産地を変えて2ヵ月は味わえる。はっきりと“季節”を感じさせてくれる野菜の一つである。桜が散るとレストランや料理屋に行く度に「そら豆まだ」と問うようになる。爽やかなこの季節にそら豆とビールもいい、真夏の枝豆とビールとは違った味わいがある。お相撲のつまみも初場所の浸し豆から、春場所のそら豆になって初夏がかもし出される。

しかし、お勧めはなんといっても「そら豆と芝海老の炒め」。そら豆と芝海老を炒めてとろみのあるスープを絡めてある中国料理である。皿にそら豆が敷き詰められ、海老が赤く黄緑に色を添える。そら豆の甘みと食感が、淡いスープとともに味わいに変わる。これでもか、といわんばかりのそら豆の量に驚き、今を感じる。

そら豆は鮮度が落ちるのが早いので、できるだけ早く食べたほうがいい。 特にサヤから出してしまうと水分が蒸発して甘味も減ってしまう。サヤにツヤがあり、中の綿が詰まっているものが新鮮な証。でんぷんとたんぱく質が主成分で、ビタミンB1、B2、C、カルシウムなどミネラルも多く含まれると言われれば、食べない理由はない。(2007.05.24)
 
 
 [007] 真鯛のかぶと焼き
真鯛のかぶと焼き 氷の上に並べられた平目、真鯛、きんき、関鯖、はまぐり。4月から6月にかけておいしいのは、なんと言っても真鯛である。産卵期の鯛は脂がのっている。産卵してしまうと、脂が抜けて痩せてしまい、身がパサパサになるが、初夏には、また脂がのってくる。
真鯛の大きな頭があれば、迷わず「真鯛のかぶと焼き」を注文。頭とカマが一番おいしいのは言うまでもない。
料理長が手にとり、頭を半分に切る。まんべんなく塩をふり、数本の串を刺す。炭火はすでに準備されており、その上に置かれた。置かれたままで、なかなか焼けない。すぐにひっくり返したり、何度もひっくり返すと旨みは逃げてしまうらしい。焼きむらができないように、十分時間をかける。皮はピンクになりやがて香ばしく焦げ目が付く。火が通るように切られた皮の切れ目から、ふっくらと白身が盛り上がる。
温めてあった大きな皿に盛られてきた。大根が5ミリぐらいの角切りにされ、大根おろしとあさつきに混ぜられて、脇に添えてある。箸を入れる、身離れがよい。「脂がのっているね」という会話を最後に、ひたすら鯛と向き合う。甘さ、引き締まっているが柔らかい身、焼き加減、塩加減、いい感じである。皿には、しゃぶり尽して骨だけが残った。(2007.05.15)
 
 
 [006] カルパッチョ
カルパッチョ イタリア料理のアンティパストの代表がカルパッチョ。ガラスの皿に薄く切られた鯛が重なることなく、一枚一枚きれいに置かれている。細かく切ったイタリアンパセリが全体にかけられ、中心には千切りのねぎがほどよい程度に盛られている。オリーブオイルとレモンがかけられたシンプルなカルパッチョである。
ほのかににんにくの風味にはっきりした塩味だが、レモンの酸味と香りが味に変化を与え、さらっとしたオリーブオイルが食感を整えている。この季節までは鯛だが、夏にかけては鱸がおいしい。冷えた白ワインが一段と引き立つアンティパストである。

カルパッチョはイタリアのヴェネツィアにある「ハリーズ・バー」でアンティパストとして出したことから始まったと言われている。牛ヒレの生肉の薄切りに、パルメザンチーズの薄切りとオリーブオイルをかけたもの、マヨネーズとマスタードを混ぜたソースを網の目状にかけたものの2種類がある。
肉とチーズやマヨネーズソースの赤と白の配色が、15世紀から16世紀にかけて活躍したイタリアの画家、ヴィットーレ・カルパッチョの赤と白の色使いを連想させるからとも、ヴィットーレ・カルパッチョが好んで食べたからとも言われている。

日本の刺身の影響を受け、イタリアでも白身の鮮魚のカルパッチョが当たり前のようにメニューにあるが本家は牛ヒレ。生肉しか出さないこだわりのレストランもある。ヴェネツィアの運河に面した「ハリーズ・バー」を思い浮かべながら、肉のカルパッチョに赤ワインで、イタリアを味わうのもおつなものである。(2007.05.08)
 
 
 [005] ムール貝の猟師風
ムール貝の猟師風 「今日の魚は」と問うとウエイターがワゴンを押してきた。細かく砕いた氷の上に、ひらめ、きんき、真鯛、スズキなどが並べられている。この時期がおいしいスズキにしようか。大きな目で訴えかけているようなまっ赤なきんきにしようか。それともみんなまとめて魚介類のスープ仕立て。いや、もうちょっと軽めでこくのあるムール貝がいい。

マネジャーにムール貝があるかを確認すると、「いい状態の大きなムール貝が入っています」と。ならば メニューにはないが“ムール貝のワイン蒸し”に決まり。「たくさんね」と言う念押しに笑ってうなずいた。
深めの皿に、ムール貝が山盛り。殻が大きくかさばるとはいえ、たいそうな量だ。にんにくの香ばしい匂いが肺を満たし、幸せな気分になる。

最初の一つは二つに割って、片方で身を削って食べ、さらにスプーンにしてスープを飲む。次は、最初のムール貝で身を採った後、これをピンセットにしてはさんで身を食べる。間にスープを飲み、また食べる。ムール貝をはさむのが早くなり、だんだん無口になっていく。ほっと一息ついてワインを飲む。辛口のきりりと冷えた白ワインがいい。

これが漁師風ムール貝の食べ方。コート ダジュールやコスタ デル ソルの漁師たちが、こうやってとれたてのムール貝を港で食べている。猟師風に食べると、磯の香りに港の風景が見えてくる。一度お試しあれ。(2007.05.01)
 
 
 [004] 若鶏のグリル
若鶏のグリル 木々が芽吹き、黄緑色のやわらかい葉が、陽に輝く。風にかすかに揺れる並木の若葉がレストランのテラスに淡い影を描いている。パラソルの間から射す太陽を肌に受け、気の早い外国人の女性は、タンクトップを着ている。連れてこられたゴールデンレトリバーは、食事をしている主人を座って待っていたが、終わらないので諦めたのか、陽だまりで心地よく眠っている。

自転車に乗って、颯爽とやってきたムッシュがテーブルに座わると、英字新聞を広げて読み始めた。そしてオリーブの実をおつまみに、白ワインを飲む。次にハーブの香りを撒きながら料理が運ばれてきた。においに惹かれて、テーブルを見ると、「若鶏のグリル」が置かれている。骨付きで、鶏肉の表面はきつね色、周りの皮がパリッと焼き上がり、ところどころ身から放れて盛り上がっている。肉汁もほどよく滴って皿に艶を与えている。
彼は鶏肉を巧みに捌き、休むことなく食べ続ける。デカンタは、赤ワインに変わっていた。その自然さに思わず見とれていたが、今度、来たときは「若鶏のグリル」を食べようと心に誓って、自分の皿に取りかかった。(2007.04.24)
 
 
 [003] 赤ピーマンとトマトのスープ
赤ピーマンとトマトのスープ 春から夏にかけて、フランス料理では、ワイングラスやカクテルグラスにスープを入れて出されることがある。ワイングラスに入れられた、涼しげなスープ、赤ピーマンのムースの上にトマトのゼリーの二層重ね。サーモンピンクの淡い色に透き通った赤いゼリーが乗せられている。野菜とは思えない。器のイメージもあるが、まるでデザートである。

赤ピーマンのムースは、見た目ではお菓子を感じるが、口に入れると、やわらかくやさしい中に、ピーマン独特の味がする。野菜の甘みだけではなく、塩分もほどよい。これにトマトのゼリーのシャープさが加わり、ふたつは新しいハーモニーを作り出している。
料理のマジック、フランス料理以外で、出せない味である。最後のスープを口に含んで、さわやかな皐月の風と夏の輝きを楽しむ。(2007.04.17)
 
 
 [002] 仔羊のポアレ
仔羊のポアレ エントランスを入ると、マダムが笑顔で迎えてくれる。来てよかった、と思う瞬間である。オープンキッチンにいるシェフと目が合い、目礼を交わす。一気に温かな雰囲気が醸成される。これが行きつけのレストランの好さである。
メニューを開いたが決まらない、目移りするときは、フランス料理の原点に返って、仔羊のポアレを食べる。

皿に盛られている仔羊には、種類も量もたっぷりである野菜のグリルが添えられている。アスパラガス、にんじん、なす、しいたけ、しめじ、ポテト、かぶ、大根、さやえんどう、トマト、菜の花、仔羊は野菜に埋もれている。焦げ目がついて柔らかくジューシーに焼き上がった肉に、香草のソースがかけてあり羊独特のにおいはしないが、肉の味は羊の味だ。脇に遠慮がちに置かれた粒マスタードを付けて食べると重厚さがます。

アスパラガスはちょうどいいゆでかげんで、歯ごたえがあり甘い。かぶと大根はみずみずしい中に、やっぱり甘みがある。にんじんの甘さ。野菜とはこんなに甘いのかと、いつも驚かされる。羊を食べたかったのだが、付け合せの野菜にも大満足。

食べ終わっての満ち足りた溜息に、「今日のあなたには、これだけの野菜が必要でしたでしょ」とシェフの笑顔が語りかける。行きつけの店ではみんなに見守られているのだ。(2007.04.10)
 
 
 [001] ベリー系のフルーツ
ベリー系のフルーツ ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー。フィンランド、ノルウェー、スウェーデンなど北欧では、春から夏にかけてベリー系のフルーツが市場に並ぶ。トマトやピーマンの赤や緑とともに、ストロベリーやブルーベリーも色どりを添える。一つもらって口に運ぶと、甘酸っぱい果汁が広がる。日照時間が少ない北欧だが、この果実には、太陽で熟した甘みがある。

デザートには、ベリーの盛り合わせにホイップクリームがついているもの、ストロベリーのムースやフルーツのタルトという定番から、チョコレートとラズベリーで作ったオリジナルケーキなど種類は多い。
レストランの中には、かごにストロベリーを山のように入れて、置いてある。甘酸っぱい香りがあたりを圧倒する。
ミルフィーユはストロベリーの果汁の甘さ、みずみずしさとともに酸味と、カスタードクリームと生クリームが調和している。さらに、サクサクとしたパイ生地が食感に変化を出している。クリームたっぷりだが、しつこくない。きっと果実そのものがおいしいからだろう。 (2007.04.02)
 

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