
サッカーJリーグ初代チェアマンの川淵三郎さんが、「一番子どもにやらせたいスポーツはラグビーだ」とおっしゃっていました。チームワークが身につき、痛みを知るからだと。タックルを受けると痛いし、どのくらいの力をかけると相手が怪我をするか、など多くを学べます。教育界では、たとえば東京で名門と言われている歴史のある私立の小学校は、ラグビー部がある学校が多いんですよ。なかには小学校のスポーツ部活はラグビー部しかない学校もあります。
僕が代表をつとめているNPO法人でもラグビースクールをやっていて、350人くらいスクール生がいます。週末だけですが、本当に楽しそうにみんなやっています。ラグビーを続けるうちに、確実に子どもたちは変わっていきます。小学校3年生くらいになると、立派なラグビープレーヤーです。ゲームではリーダーが必要ですから、リーダーが任命されますね。リーダーが仕切って仲間に励ましの言葉もかければ、叱咤もする。試合に負けたら悔しくて泣くし、コーチはその姿を見て、次はこの子たちを勝たせてやろうと、プランを出します。勝ったら勝ったで、またみんなで一緒に泣きます。
できるだけ多くの子どもたちに、そんな経験をしてもらいたい。そのために僕も、頑張っているんですよ。ただ、ラグビーは芝生の上でしかできないスポーツなので、どこでもできるわけではありません。芝生ではない環境で始めると、痛くて、つらいだけのスポーツに感じてしまいます。環境を整えないと、子どもたちにラグビーがなかなか広まりません。
それにしても、ラグビーファンは熱いですよ。世の中の人たちがあまりラグビーを知らないから、「オレはすごくいいものを知っている」という熱さを持っている。競技場でよく見る光景は、ラグビーを知らない人たちを連れてきて、説明している。その説明が、あっていないこともありますけど。(笑)
今年はフランスでワールドカップがあったので、僕たちも行っていたのですが、フランス人がラグビーはファミリーのスポーツだと言っていました。家族連れでスタジアムに入って、応援するチームはあっても、相手のチームがいいプレーをしたら素直に拍手する。試合が終わったら、両チームのサポーターが混じって食事をし、一緒に楽しむ。だから、安心して家族で観にいける、と。確かにそういう面があると思います。
女性はとくに感情移入しやすいみたいですね。実はリピート率は、女性のほうが高いですよ。フランスのワールドカップでも、4割が女性のお客さんでした。男たちが命を賭けて闘っている姿に、本能的に熱くなる。男泣き、という言葉が当てはまる競技ですからね。その姿を見て、男のロマンを感じ、女性も感動するのでしょう。
そういえば吉永小百合さんがエッセイに、書いていたと思います。父親に連れられて子どもの頃からラグビー場に通っていて、なんでこんな野蛮なスポーツを私に見せるのか、と思っていた。中学生、高校生のときも、同じ気持ちだった。ところが大学生になって、お父さんをラグビーに誘ったとき、ものすごくお父さんが嬉しそうな顔をして微笑んで、「おまえも大人の女になったか」と言われた。これを読んで、僕も嬉しくなりましたね。
ラグビーの世界では有名な言葉があります。「ラグビーは少年を一早く大人にし、大人に永遠に少年の心を抱かせる」。ラグビーとはまさに、そんなスポーツです。
清宮克幸(きよみや かつゆき)
1967年、大阪府生まれ。茨田高校でラグビーを始め、高校日本代表になる。早稲田大学に入学し、日本選手権優勝。4年には主将として大学選手権優勝。卒業後はサントリーに入社し、2001年まで中心選手として活躍した。現役時代のポジションはNo.8、フランカー。2001年、早稲田大学ラグビー部蹴球部監督に就任。4シーズン連続で関東大学対抗戦を全勝優勝、大学選手権は2度制覇している。2006年からサントリーラグビー部 サンゴリアス監督。著書に『究極の勝利』『最強のコーチング』などがある。
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