
ラグビーと他の球技との一番の違いは、体を張ること、つまりタックルが許されている点です。だからこそ、ルールが大事になってきます。1チーム15人、ピッチに出る選手は30人で、レフリーは1人。30対1ですから、レフリーが見えないところがいっぱいあるんです。見えないところで何かやっても、レフリーが気づかない場合がありますから、フェアな精神がなければゲームとして成立しません。選手一人ひとりに、フェアな精神が芽生えてきます。
「ラグビーは男が全人格を賭けて闘うスポーツだ」と言った人がいます。「心技体」という言葉がありますが、そのすべてがそろわないと勝てない。プレー中は両チームとも勝ち負けにすべてを賭けますが、プレー後は「ノーサイド」を旨とする。ここが他のスポーツには見られないラグビーの文化です。
歴史はサッカーより古く、サッカーが生まれる30〜40年前からあったようです。もともとイギリスの上流階級で行われたスポーツで、貴族たちが体を張って領土の民衆を守るための、いわば疑似体験として始まりました。
自分が守るもの、大切にすべきものを、体を張って守る。そういう人間の根源的なことが、グラウンドの上で、ルールに守られて行われます。そして、ひとつのボールを仲間でまわしてつないでいく。そのためには、自己犠牲の精神が大事になります。自分の体を犠牲にして、互いにボールをつなぎ、それによってゴールするという結果を出すわけですから。
ノーブレス・オブリージュという言葉がよく使われますが、ラグビーは、自分が置かれた立場の責任をまっとうする精神を養うスポーツでもあります。人格形成を大事にする教育的な要素が強く、紳士を作るという目的があるんですね。そういう競技ですから、イギリスのパブリックスクールなどで広がっていきました。日常生活ではジェントルマンが、ピッチでは野獣になる。そんなイメージです。
トライをとった人間は、過度に喜ばない。自分がとったわけではなく、全員でとった結果だからです。トライした人間がはやしたてられるわけではなく、チームワークを重んじます。
僕も選手時代、競技をやっていく上で挫折し、うまくいかず落ち込むこともありました。いつも周りに仲間がいました。一人ではない、と思うと力が出ましたね。これがチームスポーツのよさです。人間は一人では何もできないことに、自然に気づきます。
リーダーシップも、キーワードとして出てきます。監督はピッチにはいませんから、15人のチームを率いるリーダーの存在がすごく大事で、リーダーが発する言葉でチームの結果が変わると実感します。もちろん失敗もありますし、成功もある。そのなかで鍛えられた選手たちは、いい男になっていく。ラグビーにはそういう魅力があると思います。
世界中どこに行っても、「おまえラグビーやっていたのか」というだけで、フレンドリーになれるんですよ。おまえも、ああいうきつい練習をしてきたのか、という共通認識がありますから、お互いリスペクトしあう。同じものを追いかけたという、連帯感を持つんでしょうね。
清宮克幸(きよみや かつゆき)
1967年、大阪府生まれ。茨田高校でラグビーを始め、高校日本代表になる。早稲田大学に入学し、日本選手権優勝。4年には主将として大学選手権優勝。卒業後はサントリーに入社し、2001年まで中心選手として活躍した。現役時代のポジションはNo.8、フランカー。2001年、早稲田大学ラグビー部蹴球部監督に就任。4シーズン連続で関東大学対抗戦を全勝優勝、大学選手権は2度制覇している。2006年からサントリーラグビー部 サンゴリアス監督。著書に『究極の勝利』『最強のコーチング』などがある。
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