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一期一会
清宮克幸 マイスポーツライフ
清宮克幸 1
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NO.1 清宮克幸


必然のスポーツ

清宮克幸さん1 僕は小学校時代に野球、中学ではサッカーをやっていましたが、中学の頃からラグビーに憧れて、高校では迷うことなくラグビー部を選びました。当時はサッカーよりラグビーのほうがメジャーでしたね。みんなの憧れです。
入部してすぐに、今までやってきたどのスポーツより面白かったので、のめりこみました。
その一番の理由は、ラグビーはすべての要素を含んだスポーツだから。球技のセンスも必要だし、キックの技術はもちろん、格闘技の要素もある。つまり究極のスポーツですね。実際に、子どもの頃から野球、サッカー、バレーボール、バスケットボールなど、いろいろなスポーツを経験したアスリートが、最終的にラグビーを選ぶ場合が多いんです。

早稲田大学でもラグビー部に所属しましたが、大学を卒業する時点で、一線でラグビーをするのはやめようかと思ったことがあります。当時は大学ラグビーが頂点で、社会人ラグビーはちょっと下火という時代でしたから。主将として学生日本一になり、いわば頂点を取ったのだから、会社に就職して違う世界を見ようか、と考えたんです。
ところが社会人決勝戦で勝ったチームのメンバーが男泣きしているのを見て、もしサラリーマンになったら、30歳になってあんなに泣けることないだろうなぁ、と思ってしまった。それでラグビーを続ける決心をしました。ロマンチストですから。(笑)

清宮克幸さん2 競技生活のなかで教えられたことは、たくさんあります。ラグビーは目標を達成するために自分たちが何をしなければいけないかが、明確にあります。練習で身につけたものを本番で出せるかどうか。“できた” “できない”ありますよね。できたことはさらに伸ばすし、できなかったことは、なぜできなかったのかを突き詰めていく。そして、できるようになるためには何をしなければいけないか、検証をして実行する。その分析をずっと繰り返していきます。これは、今のビジネスの世界ですごく求められている要素です。ラグビー選手は、自然に練習やゲームから学んでいます。
他のスポーツでもそうじゃないか、と思われるかもしれませんが、一番違うのは、ラグビーは“必然のスポーツ”である点です。

実力がそのまま試合に反映され、偶然性が少ない。練習でできたこと、やったことがすぐに結果につながるので、常に自分に対して客観性を持たざるをえない。負けた理由が必ず読めます。なぜ勝ったかわからない、なぜ負けたかわからない、という偶然がないんですよ。負けた理由がわかるからこそ、次は勝てる可能性が高い。それは“人生”にも置き換えられます。
ラグビーボールは楕円形をしていますから、投げたときの軌跡が球とは違います。バウンドがどちらに飛ぶかわからないという不規則性も、よく人生に喩えられます。生きていれば必ず、どちらに転ぶかわからない局面に遭遇します。ラグビーは、まさに人生の縮図です。

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Photographs by 稲垣純也(タイトル/インタビューカット)


清宮克幸


清宮克幸 マイスポーツライフ
清宮克幸 1
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NO.2 清宮克幸


始まりはイギリス貴族のスポーツ

ラグビーと他の球技との一番の違いは、体を張ること、つまりタックルが許されている点です。だからこそ、ルールが大事になってきます。1チーム15人、ピッチに出る選手は30人で、レフリーは1人。30対1ですから、レフリーが見えないところがいっぱいあるんです。見えないところで何かやっても、レフリーが気づかない場合がありますから、フェアな精神がなければゲームとして成立しません。選手一人ひとりに、フェアな精神が芽生えてきます。

清宮克幸さん1 「ラグビーは男が全人格を賭けて闘うスポーツだ」と言った人がいます。「心技体」という言葉がありますが、そのすべてがそろわないと勝てない。プレー中は両チームとも勝ち負けにすべてを賭けますが、プレー後は「ノーサイド」を旨とする。ここが他のスポーツには見られないラグビーの文化です。
歴史はサッカーより古く、サッカーが生まれる30〜40年前からあったようです。もともとイギリスの上流階級で行われたスポーツで、貴族たちが体を張って領土の民衆を守るための、いわば疑似体験として始まりました。

自分が守るもの、大切にすべきものを、体を張って守る。そういう人間の根源的なことが、グラウンドの上で、ルールに守られて行われます。そして、ひとつのボールを仲間でまわしてつないでいく。そのためには、自己犠牲の精神が大事になります。自分の体を犠牲にして、互いにボールをつなぎ、それによってゴールするという結果を出すわけですから。

清宮克幸さん2 ノーブレス・オブリージュという言葉がよく使われますが、ラグビーは、自分が置かれた立場の責任をまっとうする精神を養うスポーツでもあります。人格形成を大事にする教育的な要素が強く、紳士を作るという目的があるんですね。そういう競技ですから、イギリスのパブリックスクールなどで広がっていきました。日常生活ではジェントルマンが、ピッチでは野獣になる。そんなイメージです。

トライをとった人間は、過度に喜ばない。自分がとったわけではなく、全員でとった結果だからです。トライした人間がはやしたてられるわけではなく、チームワークを重んじます。
僕も選手時代、競技をやっていく上で挫折し、うまくいかず落ち込むこともありました。いつも周りに仲間がいました。一人ではない、と思うと力が出ましたね。これがチームスポーツのよさです。人間は一人では何もできないことに、自然に気づきます。

リーダーシップも、キーワードとして出てきます。監督はピッチにはいませんから、15人のチームを率いるリーダーの存在がすごく大事で、リーダーが発する言葉でチームの結果が変わると実感します。もちろん失敗もありますし、成功もある。そのなかで鍛えられた選手たちは、いい男になっていく。ラグビーにはそういう魅力があると思います。
世界中どこに行っても、「おまえラグビーやっていたのか」というだけで、フレンドリーになれるんですよ。おまえも、ああいうきつい練習をしてきたのか、という共通認識がありますから、お互いリスペクトしあう。同じものを追いかけたという、連帯感を持つんでしょうね。

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Photographs by 稲垣純也(タイトル/インタビューカット)





清宮克幸 マイスポーツライフ
清宮克幸 1
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NO.3 清宮克幸


言葉の力

2001年に母校早稲田大学ラグビー部の監督に就任し、2006年からはサントリー・サンゴリアスの監督をつとめています。 監督になると見るアングルが変ってきたし、選手時代より深く見るようになります。考える時間も、3倍も4倍多くなりました。すると、練習で今週はこういうことがあったからゲームはこうなるだろうと試合を予測できる。何点差くらいでどちらが勝つかも見えてくる。でも、人間がやることですから、予測どおりにはいきませんが、そこが面白いところでもあります。

清宮克幸さん1 監督になって1年目、2年目には、こういう形にはめれば結果は出るはずだという、システム論から入っていきました。みんなが同じことができて、同じ結果が求められるチームを作っていくことが、強いチームになる秘訣だろうと。実際、ある程度結果が出ました。 前年まで弱かったチームが、メンバーが同じでも強いチームに変わる。ところがそれではいいチームになれても、本当のチャンピオンにはなれない。監督になって4年目に、そう気づきました。

選手たちが出したパフォーマンスと相手の力を比べながら、「これを足そう」「あれが足りない」と考え出すと、半年ぐらい前にやっていたことはなんだったんだ、ということが、ざらにあります。半年前と今では、ぜんぜん違うこと言っている。その繰り返しです。
面白いのは、1回できたことも時間がたつとできなくなる。盆栽と似ているかもしれませんね。毎日手入れをしていると、形よく育つけれど、1週間、放置すると、どんどん違う方向に伸びてしまう。それと同じで、3ヵ月、半年たってしまったら、まったくいいチームでなくなっている場合があります。
先週できたのに、今週できないこともあります。ラグビーがメンタル面、つまりモーチベーションのウエイトが高いスポーツだからです。先週は緊張感がまったく途切れない、素晴らしい試合ができたのに、今週はできない、といった具合です。なぜかというと、緩むんですよ。僕も監督7年目ですから、素晴らしい試合の直後は緩むことを前提に、経験の浅いルーキーメンバーをあえて入れたりして、次の試合のチームを作ります。人間の本質が見事に出るから、ラグビーは面白いんです。

これは経験上、学んだのですが人を一つの方向に向かって進めていくには、「言葉」が大事です。僕は常に有言実行。もちろん、言葉が響く選手も、響かない選手もいます。響く選手には「言葉」が信頼に変わっていくんですね。

清宮克幸さん2 大学時代ラグビー部の先輩に、イラクで亡くなった奥克彦大使がいらっしゃいます。奥先輩が命名した言葉が、「アルティメート・クラッシュ」。「徹底的に勝利を得る、究極に勝つ」というとても強い言葉です。早稲田の監督時代に奥先輩に作ってもらったこの言葉が、13年ぶりにチャンピオンになる大きな原動力になりました。このスローガンが自分たちのプライドだという気持ちが選手たちに芽生えた。できなければ早稲田のプレーヤーじゃない、と。
その経験から、サンゴリアスの監督になっても、言葉を大切にしようと思いました。強い言葉を作って、チームのプライドを作らなくてはダメだ。そこで考えて作った言葉が、「alive――生き続ける」です。すべての局面で、最後まで諦めずに、相手に支配されずに動き続けることが一番大事。極論すれば、勝ち負けよりも大事だ、と。 この言葉を掲げるようになってから、確実に結果が出てきました。前年度6位だった成績が、去年は2位になった。ラグビーは必然のスポーツですから、監督が変わっただけではチームは強くはなりません。みんながチャレンジして、同じ意識をもって向かったから結果が出せました。
結果が出ると、選手たちの間に、自然に「aliveできたから勝てた」という思いが芽生えてきます。選手一人ひとりも、自分の心の中で使ってくれていますよ。しんどいなと思ったとき、なんかモーチベーションがあがらないなと思ったときなど、いろいろなところで使える言葉です。

今年は引き続き、去年の熱を持って、「alive」2年目に入るわけです。もう充分、サントリー・サンゴリアスの言葉になっていますし、世のラグビーファンはこの言葉を聞いてサンゴリアスを連想します。僕たちがaliveし続けているところを見て、同じ気持ちになる人が増えれば、僕たちのミッションは果たせる、と思います。 僕たちのミッションは、スポーツで夢と感動を伝えることです。僕たちが熱くなる。言葉を大事にする。仲間を大切にする。そんな姿をグラウンドで見せることで、同じように感じる人たちを多く作りたい。そう願っています。

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Photographs by 稲垣純也(インタビューカット)


清宮克幸


清宮克幸 マイスポーツライフ
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NO.4 清宮克幸


少年を一早く大人にし、大人を永遠の少年に

サッカーJリーグ初代チェアマンの川淵三郎さんが、「一番子どもにやらせたいスポーツはラグビーだ」とおっしゃっていました。チームワークが身につき、痛みを知るからだと。タックルを受けると痛いし、どのくらいの力をかけると相手が怪我をするか、など多くを学べます。教育界では、たとえば東京で名門と言われている歴史のある私立の小学校は、ラグビー部がある学校が多いんですよ。なかには小学校のスポーツ部活はラグビー部しかない学校もあります。

清宮克幸さん1 僕が代表をつとめているNPO法人でもラグビースクールをやっていて、350人くらいスクール生がいます。週末だけですが、本当に楽しそうにみんなやっています。ラグビーを続けるうちに、確実に子どもたちは変わっていきます。小学校3年生くらいになると、立派なラグビープレーヤーです。ゲームではリーダーが必要ですから、リーダーが任命されますね。リーダーが仕切って仲間に励ましの言葉もかければ、叱咤もする。試合に負けたら悔しくて泣くし、コーチはその姿を見て、次はこの子たちを勝たせてやろうと、プランを出します。勝ったら勝ったで、またみんなで一緒に泣きます。

できるだけ多くの子どもたちに、そんな経験をしてもらいたい。そのために僕も、頑張っているんですよ。ただ、ラグビーは芝生の上でしかできないスポーツなので、どこでもできるわけではありません。芝生ではない環境で始めると、痛くて、つらいだけのスポーツに感じてしまいます。環境を整えないと、子どもたちにラグビーがなかなか広まりません。
それにしても、ラグビーファンは熱いですよ。世の中の人たちがあまりラグビーを知らないから、「オレはすごくいいものを知っている」という熱さを持っている。競技場でよく見る光景は、ラグビーを知らない人たちを連れてきて、説明している。その説明が、あっていないこともありますけど。(笑)

今年はフランスでワールドカップがあったので、僕たちも行っていたのですが、フランス人がラグビーはファミリーのスポーツだと言っていました。家族連れでスタジアムに入って、応援するチームはあっても、相手のチームがいいプレーをしたら素直に拍手する。試合が終わったら、両チームのサポーターが混じって食事をし、一緒に楽しむ。だから、安心して家族で観にいける、と。確かにそういう面があると思います。

清宮克幸さん2 女性はとくに感情移入しやすいみたいですね。実はリピート率は、女性のほうが高いですよ。フランスのワールドカップでも、4割が女性のお客さんでした。男たちが命を賭けて闘っている姿に、本能的に熱くなる。男泣き、という言葉が当てはまる競技ですからね。その姿を見て、男のロマンを感じ、女性も感動するのでしょう。
そういえば吉永小百合さんがエッセイに、書いていたと思います。父親に連れられて子どもの頃からラグビー場に通っていて、なんでこんな野蛮なスポーツを私に見せるのか、と思っていた。中学生、高校生のときも、同じ気持ちだった。ところが大学生になって、お父さんをラグビーに誘ったとき、ものすごくお父さんが嬉しそうな顔をして微笑んで、「おまえも大人の女になったか」と言われた。これを読んで、僕も嬉しくなりましたね。

ラグビーの世界では有名な言葉があります。「ラグビーは少年を一早く大人にし、大人に永遠に少年の心を抱かせる」。ラグビーとはまさに、そんなスポーツです。

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清宮克幸(きよみや かつゆき)
1967年、大阪府生まれ。茨田高校でラグビーを始め、高校日本代表になる。早稲田大学に入学し、日本選手権優勝。4年には主将として大学選手権優勝。卒業後はサントリーに入社し、2001年まで中心選手として活躍した。現役時代のポジションはNo.8、フランカー。2001年、早稲田大学ラグビー部蹴球部監督に就任。4シーズン連続で関東大学対抗戦を全勝優勝、大学選手権は2度制覇している。2006年からサントリーラグビー部 サンゴリアス監督。著書に『究極の勝利』『最強のコーチング』などがある。
清宮克幸 オフィシャルブログ
サントリーラグビー部「サンゴリアス」のオフィシャルサイト


Photographs by 稲垣純也(タイトル/インタビューカット)

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