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[1] 念願の初優勝

上原彩子さん1 今年の4月、「フジサンケイ・レディスクラシック」で念願の初優勝を飾ることができました。すぐには両親に電話ができず、ギャラリーをしていた姉が連絡しました。 父も母もしゃべれないくらい号泣していたそうです。「話にならないから切るよ」と電話を切られたと、後から言っていました。

プロになって5年目、「やっと優勝できた」という感じです。自信も生まれましたが、父に優勝を報告すると、「気持ちを切り替えなければだめだよ」と釘をさされました。 シーズンを通して全部で36試合あり、ほぼ毎週試合です。優勝しても、またすぐ次の試合があるので、嬉しいからといって浮かれてはいられないんです。 優勝した日は思いっきり喜びに浸るけど、翌日からは切り替えです。

今年はシーズンが始まる前から、充実していました。コーチがオーストラリアにいるので、オフの3週間、オーストラリアに滞在。 最初の1週間はコーチと一緒にゴールドコーストでトレーニングし、トレーナーにこういうところに筋肉をもう少しつけたほうがいい、といったアドバイスをもらったので、それを強化します。 技術面は、飛距離を伸ばすための技術と、アプローチの技、そして無駄な動きがあるのでもっとシンプルに体を使う練習。これは、今もまだ取り組んでいる最中です。 2週目はメルボルンでの試合に出場し、実践していく中で、今やっていることがどのくらい身についているかをチェックしました。 今までは下半身のトレーニングをメインにしていましたが、上半身の大切さを実感しましたね。帰国後も、上半身をしっかり鍛えてバランスのいい筋肉をつけようと取り組んでいます。

上原彩子さん2 シーズンを迎え、今年こそは優勝したい、そして全英に行きたいという気持ちが強かったですね。目標は3勝。初戦は「ダイキン・オーキッドレディース」でしたが、初めからいい感じでスタートがきれました。 「フジサンケイ・レディスクラシック」のときは、フィーリング的には早い段階で、“勝てそう”、という感じはありました。 ただ全英は、7位まで出場できるのですが、私は8位で行けなかったんです。残り試合も少ないので、もう一つの目標達成に集中するつもりです。

初優勝してからは、まわりの反応も違います。それまでは「いつも応援しているから早く優勝してね」と言ってくれたのが、優勝後は2位でもがっかりされてしまう。要求度が高くなるんですね。 「スタンレー・レディース」でチャンスがきて、最終日、李知姫さんと福島晃子さんと私でラウンドしました。2日目までは私がリードしていたのに、結局逆転されて2位。 その次の週も優勝争いに残ったけれど、優勝できませんでした。 負けたけれど、フィーリング的にはよかったし、内容も悪くなかったのですが、見ていた人から「なんで2位なんだ、2位じゃダメだよ」と言われました。 やっぱり「結果」で評価されるのが、プロの世界の厳しさですね。
シーズン中はほぼ毎週試合があるので、ずっと旅です。早いときには朝の7時に試合がスタートするので、その前にウォーミングアップやストレッチをするとなると、ものすごく早起きしなくてはいけません。 去年は開始が早いときはウォーミングアップができなかったんですけど、今年はきちんとやるようにしています。 シーズン中もトレーニングをしなければ筋力が落ちるので、週に1度は維持するためのトレーニングをしています。 食事も大切ですが、どうしても外食が多くなるので、野菜をなるべくとるように心がけ、作れるときは自分で作ります。 やっぱり好きなのは沖縄料理。ゴーヤチャンプルーなどを作りますが、内地では材料が高くて。そういえば最近、スーパーで青パパイヤを売っていて、しかもタイムサービスで1個105円だったんです(笑)。 シーチキンと炒めましたが、すごくおいしかったですよ。(笑)



撮影:和田直樹

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[2] 褒められた嬉しさが道を開いた

上原彩子さん 私は3姉妹の末っ子。アウトドア・ファミリーで、子どもの頃は週末になると家族みんなで山登りや、川遊びに行っていました。 スポーツも大好きで、小さい頃からトライアスロンやサッカーなどやっていました。いろいろなスポーツを試してみて、その中から自分に合うもの、好きなものをやりなさいというのが、両親の考え方でした。

父に連れられて、ゴルフの練習場に初めて行ったのは小学校6年のとき。たぶんサッカーをやっていたので、足腰がしっかりしていたんでしょうね。初めてなのに、けっこう飛んだんですよ。 そうしたら練習場にきていた知らないおじさんやおばさんたちが、「おぉーっ」と歓声をあげ、「すごいネ!」と言ってくれた。褒められたら、嬉しいですから、ゴルフが好きになったんです。 それでどんどんのめり込み、毎日のように練習するようになってしまって(笑)。 両親が共働きだったので、自分でキャディーバックかついで叔父さんの家まで行って、「練習場まで車で送って」とお願いしていました。

初めて練習場に行ったのが、確か7月。約1ヵ月後に沖縄で一番大きいジュニア大会があるというので、練習場にきている人たちが「よかったら出てみたら?」と薦めてくれたんです。 即、「出たい!」と答えました。でもまだゴルフのルールも何も知らないんです。 まわりのおじさんたちがコースに連れていってくれ、「ここがティーグランドで、向こうの旗に向かって何回で入れられるかを競うんだよ」と教えてくれた。 沖縄の人たちは、とても温かいんですよ。親身になって応援してくれるんです。

ゴルフ場 試合に出てびっくりしたのは、ジュニアがすごく大勢いること。 練習場では大人しか見かけなかったけれど、私よりも低学年でキャディーバックのほうが大きいんじゃないかという子が、キャディーバックを引っ張りながら試合に出ていました。 これには衝撃を受けました。大人がやるスポーツだと思っていたけれど、こんなにもジュニアがいるんだなって。その大会では10位までメダルをもらえるのですが、私は11位でもらえなかったんです。 口惜しかったし、もっと練習して頑張ろうという気持ちになりました。それからは学校が終わったらすぐに練習場に行き、夜遅くまで練習をしました。 いやだな、やめようかな、と思う時期もありましたよ。中学2年生の頃だったと思います。みんなは学校が終わると、楽しそうに部活をしたり、遊んだり。 ゴルフは団体スポーツではないから、自分だけで練習しなきゃいけない。みんなで頑張る、のではありません。友達とも遊べないし。 父と母は、「やめたいのならやめてもいいけれど、またやりたいと言ってもさせない」と言っていました。

それでもやめなかったのは、学校の三者面談のときに「ゴルフをやめたい」と言ったら、先生から「勉強もしていないし、あなたからゴルフをとったら何が残るの?」と言われたからですね。 確かにそうだな、と思いました。ゴルフをとったら、たぶん遊ぶくらいしかすることがない。それって、ただ瞬間的にワイワイ楽しいだけでしょう。 勉強を頑張っているんだったら、違う道も開けるだろうけれど、“今楽しければいい”みたいな生活になったら、まずいなと思って。 それで、「もっとゴルフ頑張らなきゃ」と気持ちが切り替えられたんです。練習も苦にならなくなりました。



撮影:和田直樹(ゴルフ場風景)

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[3] プロへの道

中学校3年の時に、日本ジュニアゴルフ選手権女子12〜14歳の部で優勝しました。おかげで高校の進路が決まり、おかやま山陽高校に行くことになりました。 進路が決まったときは、内地に行けるということでワクワクしていました。でも実際に行く日が近づくと、すごくナーバスになって――「行きたくない」とずっと言っていました。

ゴルフボール 沖縄の3月は暖かいのに、岡山に着いたらまだ寒いんですよ。外の景色もどんよりして、木も枯れている。本当に寂しくなり、どんどん帰りたいという気持ちが強くなりました。 初めて親元を離れたので、ホームシックですごいストレスだったんでしょうね。体調を崩して、入学式も出られなかったくらいです。 いっそ転校して、沖縄に帰ろうかと思いました。何もしない時間があると、帰りたいという気持ちが強くなって、よけい寂しくなります。 だから部活以外でも、あいている時間は全部練習にあてたいと先生にお願いし、練習場に泊まらせてもらうことにしたんです。寂しくなったら練習して、気をまぎらわせる。初めはそういう感じでした。 夏休みも、先生たちが沖縄に帰らせてくれないんです。一度帰ったら、もう岡山に戻ってこないんじゃないかと心配したんでしょうね。 「岡山はすごくいいところだよ」と、あちこち連れていってくれたり、家に招待してご馳走してくれたり。本当にお世話になりました。

タイミングよく、高校を卒業する年に、日本女子アマチュアゴルフ選手権競技で優勝しました。プロテストを受ける資格がもらえました。 ですからプロになるまで、節目、節目でタイミングよく優勝でき、先の道が開けていったんです。だからといって、決して楽だったわけではないんですけど。

プロになったら、アマチュア時代とはまったく違う厳しさがあります。最初の頃はなかなか試合に出られず、とにかく試合に出るまでが大変でした。 出場人数が決まっているので、限られた人しか出られない。勝ち抜いていかないと、その中に入れないんです。 ウェイティングで試合会場に行ってキャンセル待ちをする状態が続き――結局出られなくて、みんながラウンドしている最中に荷造りして帰ることも多かったですね。
シード権を持っている人は、試合数の何パーセント以上出場しなくてはいけない、というルールがあります。 それをクリアーするため、体調が悪くても無理してとりあえず出場して、1ホールでリタイアする場合もあります。 ウェイティングしている身としては、1ホールしかやらないんだったら最初から出なければいいのにと思わずにはいられません。そうしたら私が出られるのにって。 でも、私がシードを取ってからは、無理をしてでも出場し、途中でやめる人の思いも理解できるようになった。どの位置にいても、それぞれに大変なことがあるんだなとわかりました。



撮影:和田直樹(タイトル)

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[4] 諦めないことが何より大事

上原彩子さん1 プロテストを受けた同期に、宮里藍ちゃんと横峯さくらちゃんがいます。アマチュアのときからずっと一緒にやってきて、ナショナルチームで一緒に海外にも行きました。 でもプロになったら2人は、ドーンと抜き出ていった。なんでアマチュア時代は対等に闘っていたのに差が開いたんだろうという気持ちは、確かにありました。 そこにこだわってしまい、マイナスの気持ちになり、自分の気持ちを盛り上げていけない時期もありました。

そんなとき精神的な面でフォローしてくれたのが、すぐ上の姉です。 姉の話を聞いていると、すごく納得できるんです。でもそのときは納得しているのに、いざフィールドに立つと気持ちが引いている自分がいました。 そのへんが変わらないと、この壁はクリアーできないだろうなと、自分でも気づいていました。ほんの少しずつでも、気持ちを変えていかないと、これより先に行けないって言い聞かせました。

それで姉にキャディーをお願いしたんです。というのは、姉は外でギャラリーとして観戦していると、「ここで踏ん張ればいい感じでいける」とか、“見える”と言うんです。 だったら終わってから聞くより、実際にラウンドしながらアドバイスをもらえたほうがプレーに生きると思って。 たまたま3年くらい前にテレビの番組の企画で、横峯さくらちゃんと私で、1ホールずつ賞金をかけて100万円を狙うという企画があったんです。 そのとき初めて姉がキャディーをつとめ、さくらちゃんに勝ったら次の試合から担いであげると言ってくれた。9ホールで争ったのですが、ずっとドロー、ドロー。 さくらちゃんは飛ぶし、バーディーチャンスにつけるんですけど、その日はけっこうはずしたんですね。最後の9番で私が勝ちました。約束どおり、翌週から姉がキャディーをしてくれることになりました。

上原彩子さん2 姉妹だから私のことをよくわかってくれるし、やりやすいんです。自分では見えないところを第三者的に指摘してくれ、言われると納得できる。 それからですね、少しずつ気持ちが変わっていったのは。私は昔から、一気にバーンと花開くほうではありません。 自分のスタイルを崩さないように、地道でコツコツとプレーしていこうと思えるようになりました。

やっぱりメンタル面のコントロールは大事ですね。誰でも波はあります。調子があまりよくなくて飛距離も落ちても、闘わなくてはいけない。そういうときは、今の自分を受け入れるようにしています。 70%しか力が出せない状況のとき、100%を求めると、自分が苦しくなる。だから70%でどう闘うかを考えます。 歌が好きなので、ラウンド中に歌って気分転換をすることもあります。最近よく歌うのは、夏川りみさんの歌ですね。

18ホール全部調子がいいなんて、そうそうありません。最初の1、2、3ホールが調子よくても、18番ホールを終わってみないと、どうなるのかはわかりません。 逆にスタート直後はいい波がこなくても、「今は我慢する時だな」と踏ん張って、あとで波がきたらしっかりチャンスを生かしてアンダーに持っていく。 なかなか思うように行かないときは、もがいても空回りで終わります。そういうときは耐えるしかない。我慢します。とにかく諦めないことですね。 毎週、試合をしているのですから、一つひとつ前進していきたいですね。人間的にも。



プロフィール
上原 彩子(うえはら あやこ)
1983年、沖縄県生まれ。女子プロゴルファー。12歳からゴルフを始め、1998年、日本ジュニアゴルフ選手権女子12歳〜14歳の部優勝。2002年、日本女子アマチュアゴルフ選手権優勝。2004年にはプロテストをトップで合格し、将来有望な逸材と期待される。2005年、カトキチクイーンズで単独2位、アピタ・サークルK・サンクスレディスでも6位タイに入るなど上位に入賞。2008年、フジサンケイレディスクラシックでは念願の初優勝を果たす。今後の活躍が期待される。


撮影:和田直樹(タイトル/インタビューカット)



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