
精神力がないと闘えない
オートバイは四輪の車とは違って、まったくむき出しです。研究を重ねた装具をつけているし、サーキットでは対向車もいません。
それでも、危険と隣り合わせであることは間違いありません。僕も怪我で入院しましたが、それを越えられるだけの楽しさがあります。
転倒した後は恐怖感が出てくるので、タイムが出ないし、リズムが狂う。それをどう越えていくか、自分との闘いです。なんでこんな痛くて苦しい思いをしなきゃいけないのか、
と思うこともあります。でもレースでいい成績を残すと、その喜びが忘れられません。ヘルメットの中で「やったぞ!」と叫んでしまうくらいに。
「そういうことって、日常生活では、なかなかないでしょう。なんともいえない緊張感のなかで成績が出せたときは、本当に嬉しいです。
よし、もっと上を目指そうという気持ちになります。最近は、まわりの人の支えや、応援してくれるファンとがいるから頑張れるのかな、と思うようになりました。
僕らは陸上選手など自分の肉体のみで闘う種目とは違い、ものを使うスポーツです。マシンの状態やタイヤとの相性も、大きく関係してきます。
僕は今30歳。陸上選手だったらけっこう厳しい年齢かもしれないけれど、経験によってある程度はカバーできるんです。自分のコンディションが最高ではないときでも、
マシンとの相性がうまくいっていると、それなりの成績が出せます。もちろん自分のコンディションもよくて、チームもマシンもいいと、最高の結果が出る。それを目指しています。
フィジカルトレーニングに関しては、今も試行錯誤中。「これだ」というのは、まだ見つかりません。持久力はもちろんのこと、スピードプラス重さの“G”がかかるので、筋力も必要です。
でもあまり筋肉を増やすと、かえって持久力が落ちることもあります。カウルの中に入るので、風圧は皆さんが思っているほどではないけれど、ブレーキングするときは、かなりかかります。
ですから首も、ある程度鍛えないといけません。
トレーナーがフランス在住なので、近くに住もうと思って、昨年はフランスにアパートを借りました。トレーナーに追い込んでもらうことで、精神的にも鍛えられていく気がします。
世界を転戦しなければいけないので、体力はもちろん、精神的にも強くならないと海外では闘えません。

中野真矢(なかの しんや)
1977年、東京都生まれ。MotoGPで活躍するモーターサイクルロードレースライダー。
5歳でポケットバイクに乗り、17歳でSP忠男レーシングチーム入る。同年、鈴鹿4時間耐久レースで優勝。97年ヤマハに入り、翌年、全日本ロードレース選手権GP250チャンピオン。99年、ロードレース世界選手権(WGP)参戦を皮切りに01年500cc、02年から最高峰MotoGPクラスで活躍する。甘いマスクで、ニックネームは「王子」。
2008年よりグレイシーニ・ホンダに移籍し、新天地での活躍が期待されている。また、07年12月には結婚し、よりいっそう厚いサポートのもと表彰台を狙う。
中野真矢 オフィシャルサイト







