
集中力の勝負
チームの編成は、オーナーがいて、1人のライダーにつきメカニックやタイヤ、ガソリン担当など4、5人のスタッフがいます。ほぼ全員外国人。
コミュニケーションは英語です。お互いネイティブじゃないので下手ですが、バイクに関しては専門用語があるし、なんとかなります。ヨーロッパのラウンドでは、
コックやケイタリングスタッフもくるので、まるでサーカスの一座みたいですよ。華やかな世界ですが、そういう部分は日本では知られていない。もっと多くの人に知ってもらいたいですね。
力を発揮するためには、チームワークが何より大事。僕はそこを重視しています。万が一、ネジを締めているメカニックに何かミスあったら大変です。
その人たちに頑張ってもらうには、僕がしっかりしなければいけません。100パーセントレースに集中していることを見せなくてはまとまらないんです。
1レースは45分。その間、集中しっぱなしです。時速300キロで走っているわけですから、ブレーキングポイントを30cmずれただけで止まれません。
コーナーでも、タイヤのグリップと相談しながら走っています。本当に集中力の勝負です。極度の興奮状態になっているんでしょうね。
終わった後、気分がハイになっていることもあります。疲労感も半端じゃありません。
レースは3日制で、金曜日は午前中1時間、午後1時間の練習走行。土曜日が午前中1時間練習で、午後が予選です。日曜はフリー走行が2、30分あって、決勝走行です。
その3日間でどのように調子をあげていくかが勝負です。チームスタッフと話し合いながら、どうマシンを調整するかも重要な鍵です。ミリ単位のデリケートな調整です。
もちろん天候によっても左右されます。金曜、土曜とドライセッティングだったのに、日曜になっていきなり雨が降ることもある。すると急にウェットセッティングに変えなくてはいけません。
調整の判断は大事です。だからこそ、チーフエンジニアとのコミュニケーションが、ものすごく重要なんです。
海外に出るようになり、発見もたくさんありました。ヨーロッパでは、自己主張をしなくてはいけない。日本ではけっこう、まわりがいろいろやってくれるけれど、
それを期待しているとヨーロッパでは通じません。やりたいと思ったことは、自分で切り開いていかないとダメだと学びました。
外国の人は、メリハリが利いていますよね。レースの集中力にはびっくりします。遊ぶときは遊びに集中。十分に楽しんでいると感じました。
日本では、「いつも一所懸命頑張っています」と言っていないといけないような雰囲気がありますね。
でも彼らは、トレーニングして、レースに出て、終わったらゆっくりして、また次に集中して……と、リズムがある。僕も取り入れているつもりです。
今、海外との往復の生活が8年経ちましたが、いまだに新しい発見があります。陸続きなのに、国によって文化もまったく違うし、面白いですね。
スペイン人は食事の時間をすごく楽しみます。9時くらいから夕食を食べ始め、11時くらいに別のところに遊びにいって、翌日は普通に朝、会社に行っている。
日本人より2倍くらいは生活を楽しんでいるんじゃないかなという気がします。

中野真矢(なかの しんや)
1977年、東京都生まれ。MotoGPで活躍するモーターサイクルロードレースライダー。
5歳でポケットバイクに乗り、17歳でSP忠男レーシングチーム入る。同年、鈴鹿4時間耐久レースで優勝。97年ヤマハに入り、翌年、全日本ロードレース選手権GP250チャンピオン。99年、ロードレース世界選手権(WGP)参戦を皮切りに01年500cc、02年から最高峰MotoGPクラスで活躍する。甘いマスクで、ニックネームは「王子」。
2008年よりグレイシーニ・ホンダに移籍し、新天地での活躍が期待されている。また、07年12月には結婚し、よりいっそう厚いサポートのもと表彰台を狙う。
中野真矢 オフィシャルサイト







