副島正純
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車椅子がチャンスをくれた 4

なるべくして障害者になった

副島正純さん2 障害者に対するさまざまなことが、日本より海外のほうがずっと進んでいるというのは、僕が行ってみてよくわかりました。 健常者のときには気づかなかったことも、自分が障害者になって初めてわかります。そういう問題について考えるチャンスを得たのも、車椅子になったおかげです。

たとえばホテルでも公共施設でも、2段くらいの階段だったら、スロープにできるはずですよね。スロープにはせずに2段のままだと、僕らは人に頼らないと登れません。 海外は、そういう場所はスロープにしています。外国は「自分でやってね。でも困ったことがあったらいつでも言ってくれよ」というスタンスです。 しかもその場にいる人たちが、たいてい「手伝おうか」と言ってくれる。ところが日本では、なかなか声をかけてくれません。障害者を見て見ぬふりするスタイルが、まだあるんですね。

たぶん海外では、みんな慣れているというか、障害者と共に生きるのが当たり前なんでしょうね。障害者も同じ小学校に行くし、小さい頃から車椅子も見慣れている。 だからコミュニケーションの取り方を知っています。でも日本では、まだまだそこまではいっていないんですよ。

副島正純さん2 僕は障害を得てさまざまなことに気づけたし、考えることができた。そして気づいたことを、何かの形で還元したいという思いがあります。 僕は37歳で初めて気づいたんですが、20代で気づけたらもっといいでしょう。だから僕の存在が、いろいろな方に何かに気がつくきっかけになれればすごく嬉しい。 走ることを通して何かそういうことを伝えたい。僕は何かの役に立ちたいんです。

もっといろいろなところに行きたいし、レースにも勝ちたい。自分のためだけではなくて、後に続く後輩たちに何か残したいという気持ちも強くあります。 どんなにいい活動をしていても、知られないと力になりません。知ってもらうために、僕には結果が必要なんです。 僕が世界一になるくらい頑張っていると認めてもらえるし、発言できる場も増えていきますから。

障害者の子どもたちに、先輩としていい背中を見せたい。僕が世界を取れるということは、誰にでも可能性があるということを示したいのです。努力すればできることを見せたいと思っています。

少しずつでも何かを変えていくきっかけになれるとしたら、僕という人間の存在価値があった、ということですよね。だから僕は本当に、ラッキーだったなと思います。 健常者のままでいたら、37歳のごく普通のオッサンで、毎日仕事して、帰って酒を飲んで寝て、という生活だったでしょう。自分自身に存在価値がどうあるかなんて、考えなかったと思います。

僕には、37歳にしてまだまだ世界を目指すという夢がある。そして頑張る僕を見てくれている人たちがいて、感動して「自分も頑張ろうと思った」と言ってくれる。 すごくありがたいし、存在価値の確認になります。

副島正純さん2 最初に障害を持ったときには絶望感で、正直、死んだほうがいいと思ったこともありました。 でも、生きて、好きでやっていることで認められて、存在価値を認めてくれる人がいるのは、素晴らしいことだなと実感せずにはいられない。 ものすごいチャンスを与えられたなと思うし、生きてきて本当によかったといろいろなことに感謝する毎日です。

だから今はすべてのことが、「よかったな」と思えます。障害者になったことも含めて。車椅子になったおかげで、ここまでの充実感と生きている楽しみを感じていられます。 僕はなるべくして障害者になった、と受け止めています。

やれることはすべてやっておきたい気持ちでいっぱいです。今、この瞬間にできることを、一所懸命やりたい。
10年後には、現役としてトップにはいられないだろうけれど、そのときにはまた違うポジションを見つけているだろうし、そのためにも、今、全力で走らないと!



副島正純(そえじま まさずみ)
1970年、長崎県生まれ。シーズアスリート所属。94年、家事手伝い中の事故により脊髄を損傷。車椅子の生活となる。95年、11月、車椅子マラソンを始める。96年、初レースは「まなす車椅子マラソン大会」(札幌)ハーフマラソン3位。2005年から07年、JALホノルルマラソン3連続優勝。07年2月、東京マラソン優勝、4月にはボストンマラソン優勝(日本人初)、9月の世界陸上2位、9月のベルリンマラソン(ドイツ)では優勝(日本人初)という快挙。そのほかの大会でも優秀な成績をあげ、アスリートとして活躍しながら、講演活動も積極的に行っている。04年に福岡県民スポーツ栄誉賞、内閣総理大臣賞、厚生労働大臣賞を受賞している。今後の活躍が期待されている。
副島正純 オフィシャルサイト


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